ぼたもち(仮)の重箱

躁うつ病、万年筆、手帳、当事者研究、ぼたもちさんのつれづれ毎日

薬指の標本(小川洋子)

病気になって不自由になったこと。

体力と気力の極端な低下。

 

私が特に感じるのは、本を読むのが疲れる、ということ。

 

人によると思います。

メンタルやられていても、本は読めるという人もたくさんいるはず。

でも私は、本が読めなくなりました。

マンガですら。

 

しかし、まだ30代の頃までは、少しは読めました。

 

病気になって2年やそこらの頃に読んだ本がこれ。

薬指の標本 (新潮文庫)

薬指の標本 (新潮文庫)

 

博士の愛した数式」で有名な小川洋子さんの短編集です。

 

タイトルになっている「薬指の標本」という作品が、とてもとても良いです。

昔、mixiレビューに何か書いたなと思って辿ってみたら、こんなことを書いていました。

 

 

***

 

究極の官能小説。と私は思う。

小川作品らしい、独特の静かな時間。
首筋にふっと息を吹きかけられ、うっとりするような強烈な官能。
誰かの秘め事をすりガラス越しに覗き見するような、背徳的な胸の鼓動。

読むごとに、気が遠くなりそうだ。
愛する人に髪を撫でられる瞬間の陶酔にも似ている。

 

***

 

 

カッコつけた書き方していますが、今でも感想はそんなに変わっていません。

 

 

小川洋子さんの表現方法はいずれも非常に美しく優れていますが、私は中でも「触覚」に注目しています。

文字通り、「触れる感じ」。

一行一行じっくり読んでいると、言葉たちに、くすぐったいところに触れられている感覚を覚えます。

恐らくこれは、性感の一種なのでは。

本当に、気持ち良くなるんです、読んでいると。

うっとりします。ぼーっとします。

マタタビの猫みたいな感じになります。

表現はとても上品なのに、不思議です。

 

生まれて初めて「ふわぁ、気持ちいい」と思ったのは、小学3年生か4年生の夏に、プールサイドでクラスメイトの女の子からフワッと髪を触られた時でした。

ふわぁぁ、今でも思い出します。

なんだかわからないけど、とっても気持ち良かった。

その瞬間を、なぜだか思い出します。

小川洋子さんの小説を読んでいると、ほぼ必ず思い出します。

 

私はこの人の小説を、脳みそではなく感触、触覚で読んでいるのではないかと思っています。

 

毎日のように読む作品ではないですが、時々むしょうに読みたくなる一冊です。

そんなに長いものではないので、病気の人でも読めると思います。

 

 

おススメ♪